編曲の印税について、具体的な仕組みや金額がわからずお困りではありませんか。「そもそも編曲は印税収入ですか?」という基本的な疑問から、「編曲者の収入はいくらですか?」といった現実的なお金の話、さらには「CDを5万枚売り上げたときの印税はいくらですか?」という具体的なシミュレーションまで、知りたいことは多岐にわたるでしょう。
また、音楽制作の現場では、編曲と作曲の違いや、作曲と編曲はどっちが大変なのかといった議論も絶えません。JASRACと編曲の印税がどう関係しているのか、カバー曲などの編曲には許諾が必要ですか?という権利に関する問題も重要です。
この記事では、編曲家や編曲までやるアーティストの収入事情、プロの編曲のやり方から、最終的に編曲依頼を考える際に役立つ知識まで、編曲とは何かという根本から印税に関するあらゆる疑問を網羅的に解説します。
- 編曲における印税の基本的な仕組み
- 編曲家の主な収入源と具体的な金額感
- JASRACの「公表時編曲」制度の詳細
- 編曲で印税収入を得るための実践的な方法
編曲で印税は発生する?基本を解説
- 編曲はそもそも印税収入ですか?
- 編曲と作曲の明確な違いとは
- 作曲と編曲はどっちが大変なのか
- 編曲家という専門家の仕事内容
- 近年増えている編曲までやるアーティスト
編曲はそもそも印税収入ですか?
結論から言うと、日本の音楽業界において編曲の仕事は、基本的には直接的な印税収入にはなりません。多くの場合は、楽曲の編曲作業に対して「1曲あたり〇〇円」という形で報酬が支払われる、いわゆる「買い取り」形式が一般的です。
その理由は、日本の著作権法における扱いにあります。著作権法では、メロディを作る「作曲」や歌詞を作る「作詞」が一次創作と見なされるのに対し、編曲は既存の曲に手を加える二次的著作物と位置づけられています。このため、楽曲が使用されるたびに発生する著作権印税は、主に作詞家や作曲家に分配される仕組みになっているのです。
ポイント
編曲家の報酬は、楽曲のヒットに関わらず固定額が支払われる「編曲料」が中心です。これは安定した収入源である一方、楽曲が大ヒットしても追加の報酬(印税)は原則として発生しないことを意味します。
ただし、編曲家が印税収入を得る道が全くないわけではありません。後述するJASRACの「公表時編曲」という特別な制度を利用することで、編曲家もカラオケでの使用料の一部を印税として受け取ることが可能になります。また、契約によっては、CDの売上に応じたインセンティブが設定されるケースもあります。
編曲と作曲の明確な違いとは
音楽制作において「作曲」と「編曲」は、しばしば混同されがちですが、その役割は明確に異なります。作曲が楽曲の骨格である「メロディ」と「コード進行」を生み出すゼロからイチの作業であるのに対し、編曲はその骨格に肉付けをして、リスナーが聴く最終的な楽曲の形に仕上げる作業です。
もう少し具体的に、それぞれの役割を下の表にまとめました。
| 項目 | 作曲 (Composition) | 編曲 (Arrangement) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 楽曲の主旋律(メロディ)と、それを支える和音(コード進行)を作ること。 | 楽曲全体の構成、使用する楽器の選定、リズムパターンの作成、イントロや間奏などを加えること。 |
| 創作の性質 | 一次創作(オリジナルな作品を生み出す) | 二次創作(既存のメロディを元に発展させる) |
| 必要なスキル | メロディを生み出す発想力、音楽理論の基礎知識 | 幅広い音楽理論、楽器の知識、DAW操作スキル、サウンドデザイン能力 |
| 権利・収入 | 著作権が発生し、著作権印税が主な収入源となる。 | 基本的には著作権印税の対象外で、編曲料(買い取り)が主な収入源となる。 |
このように言うと、作曲がなければ編曲は存在し得ず、編曲がなければ楽曲はメロディの断片でしかありません。例えば、有名なクラシック曲をロックバージョンにしたり、アコースティックギター1本で弾き語りできるようにするのも編曲の仕事です。同じメロディでも、編曲次第で曲の印象は全く異なるものになります。
作曲と編曲はどっちが大変なのか
「作曲と編曲、どちらがより大変か?」という問いに対する答えは、「どちらも異なる種類の専門性と大変さがある」というのが最も正確でしょう。どちらか一方が優れている、または大変だと一概に断定することはできません。
作曲の大変さは、何もない状態から人々の心を動かすメロディを創造する点にあります。これは純粋なインスピレーションや閃き、そして作者の感性が大きく問われる部分です。全く新しいものを生み出す苦しみは、作曲家ならではのものでしょう。
一方、編曲の大変さは、その膨大な知識量と技術力にあります。編曲家は、元のメロディの魅力を最大限に引き出すために、以下のような多様なスキルを駆使する必要があります。
- 音楽理論(和声学、対位法など)
- 各楽器の特性や演奏法に関する深い知識
- DAW(音楽制作ソフト)を自在に操る技術
- サウンドメイキングやミキシングの能力
- クライアントやアーティストの意図を正確に汲み取るコミュニケーション能力
著名なボカロPであるMitchie M氏も、自身のブログで「楽曲制作で一番時間がかかり専門知識も要るのがアレンジ」と語っています。この言葉からも、編曲がいかに専門的で労力のかかる作業であるかが伺えますね。
このように考えると、作曲は「発明家」、編曲は「建築家」に例えられるかもしれません。発明家が画期的なアイデアを出し、建築家がそのアイデアを元に、安全性やデザイン性を考慮して実際に人が住める家を建てる。両者がいて初めて、素晴らしい作品が完成するのです。
編曲家という専門家の仕事内容
編曲家(アレンジャー)は、楽曲の魅力を最大限に引き出し、音楽作品としての完成度を高めるための専門家です。その仕事は多岐にわたりますが、中心となるのは作曲家が作ったメロディとコードを元に、楽曲全体のサウンドをデザインしていくことです。
具体的な仕事内容を流れに沿って見ていきましょう。
1. 楽曲の方向性の決定
まず、アーティストやプロデューサーと打ち合わせを行い、楽曲のコンセプトやターゲット層、参考にしたい音楽の方向性などを共有します。ここで楽曲全体のイメージを固めることが非常に重要です。
2. 楽曲構成の構築
イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、アウトロといった楽曲の全体的な構成を考えます。リスナーを飽きさせず、楽曲のクライマックスを効果的に演出するために、構成の妙が求められます。
3. 楽器の選定とアレンジ
楽曲のイメージに合わせて、使用する楽器を選びます。ドラムやベースのリズム隊から、ギター、ピアノ、ストリングス、シンセサイザーまで、無数の選択肢の中から最適なサウンドを選び出し、それぞれのパートのフレーズを作成していきます。どの楽器にどの役割を持たせるかで、曲の雰囲気は大きく変わります。
4. サウンドデザインと打ち込み
DAW(音楽制作ソフト)を使い、各楽器の音色を作り込み、実際に演奏データを打ち込んでいきます。近年では、編曲家がミックスやマスタリングといったエンジニアリングの領域まで担当することも増えており、より幅広い技術力が求められる傾向にあります。
補足
編曲家は、単に音楽理論に詳しければ良いというわけではありません。最新の音楽トレンドを常に把握し、多様なジャンルに対応できる柔軟性、そして何よりも元の楽曲への深い理解とリスペクトが不可欠な職業です。
近年増えている編曲までやるアーティスト
従来、日本の音楽業界では作曲家、作詞家、編曲家、演奏家といった形で分業体制が敷かれるのが一般的でした。しかし、近年ではDAW(音楽制作ソフト)の進化と普及に伴い、作詞・作曲から編曲、さらには演奏やミックスまで、その多くを自身で手掛けるアーティストが急増しています。
このようなセルフプロデュース型のアーティストが増えた背景には、いくつかの理由が考えられます。
編曲まで手掛けるメリット
- 世界観の完全な表現:外部の編曲家を介さないことで、自身の頭の中にあるサウンドイメージをダイレクトに、そして細部に至るまで楽曲に反映させることができます。
- 制作のスピードアップ:他者とのやり取りが減るため、スピーディーな楽曲制作が可能になります。
- コスト削減:外部に編曲を依頼する必要がないため、制作にかかる費用を抑えることができます。
もちろん、編曲まで自身で行うには、作曲能力とは別に、音楽理論や楽器の知識、DAWの操作スキルといった編曲家としての高度な専門技術が求められます。そのため、誰にでもできることではありませんが、自身の音楽性をより深く追求したいアーティストにとって、編曲は非常に強力な武器となります。
このようなアーティストの登場は、リスナーにとっても、より個性的で純度の高い音楽に触れる機会が増えるというメリットがあると言えるでしょう。
編曲の印税収入を増やす実践知識
- 編曲者のリアルな収入はいくらですか?
- CDを5万枚売り上げたときの印税は?
- JASRACにおける編曲の印税事情
- カバー曲の編曲には許諾が必要ですか?
- プロが行う編曲のやり方の流れ
- まとめ:編曲の印税を理解し編曲依頼へ
編曲者のリアルな収入はいくらですか?
編曲家の収入は、その実績や知名度、契約形態によって大きく変動するため一概には言えませんが、主な収入源は前述の通り「編曲料」という買い取り形式の報酬です。これが編曲家の収入の根幹を成します。
編曲料の相場はまさにピンキリですが、一般的な目安としては以下のようになります。
- 新人・若手:1曲あたり数万円~15万円程度
- 中堅・実績のある編曲家:1曲あたり20万円~50万円程度
- トップクラスの著名な編曲家:1曲あたり50万円以上、中には100万円を超えるケースも
注意点
これはあくまで一般的な目安です。インディーズシーンやコンペティションなどでは、これよりも低い金額で依頼されることも少なくありません。また、編曲だけでなくミックスやマスタリングまで担当する場合は、その分の報酬が上乗せされます。
では、印税による収入はどの程度期待できるのでしょうか。
編曲家が印税を得る主な方法は、JASRACの「公表時編曲」制度を利用することです。これは、その楽曲がカラオケで歌われるたびに発生する使用料のごく一部(全体の1/12)が分配されるというものです。そのため、カラオケで定番となるような大ヒット曲を手掛けない限り、編曲の印税だけで大きな収入を得るのは難しいのが現状です。
従って、編曲家のリアルな収入は、「安定した編曲料の受注をどれだけ継続できるか」に大きく依存していると言えるでしょう。
CDを5万枚売り上げたときの印税は?
CDの売上から発生する印税の仕組みを理解するために、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。ここでは、税抜3,000円のCDが5万枚売れたと仮定します。
まず、CDの売上に対して発生する「著作権印税」は、日本ではCD定価の6%が一般的です。この印税を作詞家と作曲家(そして管理する音楽出版社)で分け合います。
作曲家・作詞家の印税
計算式は以下の通りです。
3,000円(CD価格) × 6%(印税率) × 50,000枚 = 9,000,000円
この900万円が、レコード会社からJASRAC等を通じて著作権者に支払われます。作詞家と作曲家が別々の場合、この金額を契約に基づいて(多くは折半して)分配することになります。
編曲家の印税
一方、編曲家にはこの900万円は分配されません。編曲家が印税を得られる可能性があるのは、前述の「公表時編曲」制度によるカラオケ使用料です。
補足:カラオケ印税のシミュレーション
カラオケ印税は1回歌われるごとに発生し、相場は1曲あたり3円~7円程度と言われています。仮に1曲5円とし、その曲がカラオケで年間100万回歌われたとします。
5円 × 1,000,000回 = 5,000,000円(年間総額)
公表時編曲者の分配率はこの1/12なので、
5,000,000円 ÷ 12 ≒ 416,666円
これが編曲家が1年間で得られる印税収入の目安です。CDが5万枚売れるほどのヒット曲であれば、カラオケでも多く歌われる可能性が高いため、決して無視できない金額になりますが、CDの著作権印税に比べると非常に小さい規模であることがわかります。
これらの計算から、編曲家にとって印税はあくまで副次的な収入であり、主軸は編曲料であることが改めて理解できます。
JASRACにおける編曲の印税事情
編曲家が印税収入を得るための数少ない道筋が、JASRAC(日本音楽著作権協会)が定める「公表時編曲」という制度です。これは、編曲家の創作的貢献を評価し、その対価を分配するために設けられた特別な仕組みです。
制度の要点をまとめると以下のようになります。
JASRAC「公表時編曲」制度の概要
- 対象:作品が初めてCDなどの録音物で発売される際に付された編曲。
- 分配内容:その楽曲がカラオケで歌唱された際の演奏使用料のうち、1/12が公表時編曲者に分配される。
- 対象外:カラオケ以外の使用(放送、配信、ライブなど)による使用料は分配されない。
この制度を利用するには、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解しないまま手続きを進めると、意図しない結果になる可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。
「公表時編曲」制度利用の注意点
- 初出の録音物限定:既に発表されている楽曲のカバーやリアレンジ、配信限定リリースは対象外です。あくまで「初めてCDとして世に出る」編曲でなければなりません。
- 登録は1名のみ:複数の編曲家が共同で作業した場合でも、公表時編曲者として登録できるのは1名だけです。誰を登録するかは、関係者間で事前に協議しておく必要があります。
- JASRACとの信託契約が必須:この制度を利用するためには、編曲家自身がJASRACと著作権信託契約を結ぶ必要があります。これにより、自身の全作品(過去作、未来作含む)がJASRACの管理下に入ることになります。作品単位での契約はできません。
自身の活動スタイルをよく考えた上で、JASRACと信託契約を結び、この制度を利用するかどうかを判断することが重要です。
カバー曲の編曲には許諾が必要ですか?
結論として、他人が作った曲(カバー曲)を編曲して公開する場合、必ず原曲の著作権者からの許諾が必要です。これは、個人的な趣味の範囲であっても、YouTubeなどのプラットフォームで公開する以上は必須の手続きとなります。
なぜなら、編曲は元の楽曲(一次的著作物)を利用して新たな創作(二次的著作物)を行う行為だからです。著作権法では、原曲の著作権者は、自身の楽曲を元にした二次的著作物の創作に関しても権利(翻案権)を持っています。そのため、無断で編曲・公開することは、この著作権者の権利を侵害する行為にあたります。
許諾を得る方法
許諾を得る相手は、その楽曲の著作権を管理しているところになります。多くの場合、以下のいずれかの方法で手続きを行います。
- JASRAC等の著作権管理団体への申請:日本国内の多くの楽曲はJASRACやNexToneといった団体が管理しています。これらの団体が定める手続きに従って申請し、使用料を支払うことで許諾を得られます。
- 音楽出版社や著作権者への直接連絡:管理団体に信託されていない楽曲の場合は、その楽曲を管理する音楽出版社や、著作権者本人に直接連絡して許諾を得る必要があります。
無断公開のリスク
もし許諾を得ずにカバー曲の編曲バージョンを公開した場合、著作権侵害として動画の削除要求を受けたり、最悪の場合は損害賠償を請求されるなどの法的措置を取られたりする可能性があります。必ず正規の手続きを踏むようにしましょう。
プロが行う編曲のやり方の流れ
プロの編曲家がどのように仕事を進めているのか、その一般的な制作フローを紹介します。プロジェクトによって細部は異なりますが、おおよそ以下のステップで進められます。
ステップ1:打ち合わせとヒアリング
まず最初に、アーティストやプロデューサーとの打ち合わせから始まります。ここで、作曲家から提供されたデモ音源(メロディと簡単なコードだけのものが多い)を聴き、楽曲のコンセプト、ターゲット、完成イメージなどを徹底的にすり合わせます。参考となる楽曲を共有し合い、方向性の認識を合わせることが極めて重要です。
ステップ2:プリプロダクション(方向性の具体化)
打ち合わせの内容を元に、編曲家が楽曲の簡単なラフスケッチを作成します。これを「プリプロ」や「デモアレンジ」と呼びます。大まかなリズムパターンや楽器編成、楽曲構成などをここで具体化し、関係者に提示して方向性に間違いがないかを確認します。この段階での修正は比較的容易なため、重要な工程です。
ステップ3:本番アレンジ作業
方向性が固まったら、DAW上で本格的なアレンジ作業に入ります。各楽器のフレーズを詳細に作り込み、音色をエディットし、楽曲を構築していきます。生楽器の演奏が必要な場合は、この段階でミュージシャンに依頼し、レコーディング(録音)を行います。
ステップ4:ミックスダウン
アレンジとレコーディングが完了した全ての音(トラック)の音量バランスや定位(左右の配置)、音質を調整し、最終的な2mix(ステレオ音源)にまとめる作業です。楽曲の聴こえ方を決定づける重要な仕上げの工程で、近年は編曲家が兼任することも多いです。
ステップ5:納品
完成した音源をクライアントに納品し、最終確認をしてもらいます。修正依頼があれば対応し、OKが出れば作業完了となります。
このように、プロの編曲は創造的な作業であると同時に、クライアントの要望に応えるための緻密なコミュニケーションと技術が求められる仕事なのです。
まとめ:編曲の印税を理解し編曲依頼へ
- 編曲の報酬は印税ではなく買い取り形式の編曲料が一般的
- 著作権法上、編曲は二次的著作物と位置づけられるため
- 作曲は一次創作でメロディを作り、編曲はそれを発展させる二次創作
- 作曲と編曲はそれぞれ異なる専門性と大変さがある
- 編曲家は楽曲のサウンド全体をデザインする専門家
- 近年は作詞作曲から編曲まで自身で手掛けるアーティストが増加
- 編曲家の収入は実績により異なり編曲料が収入の主軸
- CDの著作権印税は主に作詞家と作曲家に分配される
- 編曲家が印税を得るにはJASRACの公表時編曲制度がある
- 公表時編曲制度はカラオケ使用料の1/12が分配される仕組み
- 制度利用には初回CDでの編曲であることなど複数の条件がある
- 制度を利用するにはJASRACとの信託契約が必須となる
- カバー曲を編曲して公開する場合は必ず原曲の著作権者の許諾が必要
- プロの編曲作業は打ち合わせから納品まで緻密な工程で進められる
- 編曲の権利と収入の仕組みを正しく理解することが重要



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